🧒成長シリーズ❹ お口の使い方と歯並び
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2026.08.19
呼吸・舌・唇・頬
―「お口の使い方」と歯並びの関係―
歯並びを考えるとき、「歯」だけを見ていませんか?
お子さまの歯並びが気になったとき、多くの方はまず歯を見ます。
「前歯が出ている」
「歯が重なっている」
「隙間がある」
「受け口になっている」
もちろん、それは大切な情報です。
しかし、もう一つ見ておきたいものがあります。
それが、
「そのお口を、普段どのように使っているのか」
ということです。
呼吸をする。
舌を動かす。
唇を閉じる。
頬を動かす。
食べ物を噛む。
飲み込む。
これらは、毎日無意識に繰り返している動作です。
そして、お子さまのお口が成長していく過程では、こうしたお口の機能も大切な要素の一つになります。
1.歯は「何もない空間」に並んでいるわけではありません
歯の周囲には、舌があります。
外側には唇や頬があります。
そして、その内側と外側からさまざまな力が加わっています。
歯は骨に支えられていますが、同時に周囲の環境の影響も受けています。
例えば、
舌がどこにあるのか。
唇がどのように閉じているのか。
頬の筋肉がどのように働いているのか。
こうした状態が、長い時間をかけて歯の位置や歯列の形に影響することがあります。
だからこそ、歯並びを考えるときには、
「歯がどこにあるか」だけではなく、「歯の周囲がどうなっているか」
を見ることが大切なのです。
2.「口がポカン」と開いているのはなぜ?
お子さまがテレビを見ているときや、ぼーっとしているとき、
口がポカンと開いている
ことはありませんか?
一時的なことであれば、必ずしも問題があるとは限りません。
ただし、普段から口が開いていることが多い場合には、
「鼻で呼吸しにくいのかな?」
「唇を閉じる力が弱いのかな?」
「舌の位置はどうなっているのかな?」
など、いくつかの可能性を考えることができます。
つまり、
「口が開いている」という見た目だけで原因を決めつけない
ことが大切です。
3.鼻呼吸と口呼吸
人間は本来、鼻から空気を取り込むことができます。
しかし、
鼻づまりなどで鼻呼吸がしにくい場合、
口から呼吸することがあります。
また、習慣的に口呼吸が続いているお子さまもいます。
口呼吸が続くと、口の中が乾燥しやすくなったり、唇が開いた状態になったりするなど、お口の環境に変化が生じることがあります。
そして、口が開いた状態が長く続くと、舌の位置や唇の使い方にも影響することがあります。
ここで大切なのは、
「口呼吸をしているから歯並びが悪くなる」
と単純に決めつけないことです。
鼻の状態、舌、唇、顎の成長、姿勢など、いくつもの要素を一緒に考える必要があります。
4.舌は「お口の中の筋肉」です
舌は、食べ物を味わうためだけの器官ではありません。
食べ物をまとめる。
噛んでいる場所へ食べ物を運ぶ。
飲み込む。
言葉を発音する。
そして、普段の安静時にも、お口の中で一定の位置を保っています。
そのため、咬合発育を考えるときには、
「舌が普段どこにあるのか」
という視点も重要になります。
5.舌の「安静時の位置」
舌は、食事や会話をしていないときにも、お口の中にあります。
この「何もしていないとき」の舌の位置を、安静時の舌位と呼びます。
お口を閉じて鼻で呼吸しているとき、舌は上顎側に位置していることが多いです。
一方で、口が開いている状態が続くと、舌の位置も変化することがあります。
ここで大切なのは、
「舌が低いから必ず歯並びが悪くなる」
という単純な関係ではないことです。
舌の位置だけで判断するのではなく、
呼吸、
唇の閉じ方、
飲み込み、
歯並び、
噛み合わせ、
顎の成長など、
全体を見て考える必要があります。
6.「舌で歯を押している」とは限りません
「舌で前歯を押しているから、前歯が出ているんですよね?」
と聞かれることがあります。
確かに、舌の動きや位置が歯並びに関係する場合はあります。
しかし、前歯の位置だけを見て、
「舌が原因」
と決めつけることはできません。
歯の大きさ。
顎の成長。
歯列の形。
唇の力。
呼吸。
飲み込み。
こうした複数の要素が関係している可能性があります。
だからこそ、
原因を一つに決めつけないこと
が重要です。
7.唇と頬も、歯の周りで働いています
歯の外側には、唇や頬があります。
食べ物を噛むときには、頬が食べ物を歯の上に戻す働きをします。
唇は食べ物を取り込んだり、お口を閉じたり、発音したりする役割があります。
つまり、
舌だけではなく、唇や頬もお口の機能の一部
です。
歯は、こうした筋肉に囲まれた環境の中にあります。
そのため、歯並びを見るときには、歯の周囲で筋肉がどのように働いているのかも考える必要があります。
8.「噛む・飲み込む」も、お口の発達です
お子さまが食事をするとき、
食べ物を口に入れる。
↓
歯で噛む。
↓
舌で食べ物をまとめる。
↓
飲み込む。
という一連の動作を行っています。
これは、単なる「食事」ではありません。
お口のさまざまな機能を使った、毎日のトレーニングともいえる行為です。
もちろん、食べ物を硬くすればよい、という話ではありません。
大切なのは、
年齢や発達に合った食べ方ができているか
ということです。
9.姿勢も無関係ではありません
少し意外に感じられるかもしれませんが、お口の機能を見るときには、姿勢にも目を向けることがあります。
例えば、食事中に、
- 背中が大きく丸まっている
- 顎を前に突き出している
- 足が床についていない
といった状態では、食べにくさにつながることがあります。
もちろん、
「姿勢が悪い=歯並びが悪くなる」
という単純な話ではありません。
しかし、呼吸や飲み込み、噛む機能などを考えるときには、全身の姿勢も含めて見ることがあります。
お口は、顔だけで独立して働いているわけではないからです。
10.「口呼吸を治せば歯並びも治る」というわけではありません
ここも非常に大切です。
インターネットでは、
「口呼吸をやめれば歯並びが治る」
というような表現を見かけることがあります。
しかし、そんなに単純ではありません。
歯並びには、
遺伝的な要素
顎の成長
歯の大きさ
歯列の形
噛み合わせ
お口の機能
など、さまざまな要因が関係します。
そのため、
「口呼吸だけを治せばすべて解決」
とは考えません。
大切なのは、
なぜ口呼吸になっているのかを考えること
です。
鼻が詰まっているのか。
鼻で呼吸しにくいのか。
唇を閉じにくいのか。
舌の位置はどうなのか。
こうした原因を確認することが重要です。
11.毎日の「何気ない姿」にヒントがあります
保護者の方にお願いしたいのは、特別なことをすることではありません。
普段のお子さまを、少し観察してみてください。
例えば……
□ 普段、口が開いていることが多い
□ テレビを見ているときに口がポカンとしている
□ 鼻が詰まっていることが多い
□ 寝ているときに口が開いている
□ 舌が前に出ていることがある
□ 食べるときにクチャクチャ音がする
□ 食事中に姿勢が崩れやすい
□ 前歯で食べ物を噛み切りにくそう
□ 飲み込むときに唇に力が入る
□ 「お口を閉じて」と言わないと閉じない
これらは、病気を意味するチェック項目ではありません。
しかし、
「お口の使い方を一度見てみようかな」
と考えるきっかけにはなります。
12.大切なのは「悪い癖を探す」ことではありません
ここまで読んで、
「うちの子、全部当てはまる!」
と心配になった方もいらっしゃるかもしれません。
でも、どうか慌てないでください。
子どもには、それぞれ個性があります。
一時的に口が開くこともあります。
食べ方が上手になるまで時間がかかることもあります。
舌の位置も、成長によって変わっていくことがあります。
だからこそ、
一つの症状だけを見て「悪い癖」と決めつけない
ことが大切です。
私たちが見るのは、
そのお子さまのお口全体が、どのように機能しているのか
です。
石﨑歯科医院が大切にしている「機能を見る」という視点
歯並びを診るとき、
歯だけを見るのは簡単です。
しかし、
「この子はどうやって呼吸しているのか?」
「舌はどこにあるのか?」
「唇は自然に閉じられるのか?」
「食べるとき、どのように噛んでいるのか?」
「どのように飲み込んでいるのか?」
というところまで考えると、見えてくるものが変わります。
もちろん、すべての歯並びの問題がお口の機能によって起こるわけではありません。
遺伝や骨格など、本人の努力だけでは変えられない要素もあります。
だからこそ、
「原因を決めつけず、必要なところを一つずつ確認する」
ことを大切にしています。
第4章のまとめ
お子さまの咬合発育を考えるときは……
① 歯だけでなく、歯の周囲の環境を見る
② 呼吸・舌・唇・頬は、お口の重要な機能
③ 口呼吸がある場合は、その原因を考える
④ 舌の位置だけで歯並びの原因を決めつけない
⑤ 噛む・飲み込むことも、お口の発達の一部
⑥ 一つの「癖」だけで判断せず、お口全体を見る
そして、
「歯並びを治す」前に、
「そのお口が、どう使われているのか」を知る。
これが、咬合発育を考えるうえで大切な視点です。