🧒成長シリーズ❷ 顎は、どのように成長するの?

2026.08.19

子どもの顎は、どのように成長するの?

「歯並び」を見る前に知っておきたい、顎の成長の話

子どもの歯並びを考えるとき、

「歯が大きいからガタガタしているのかな?」

「顎が小さいから歯が並ばないのかな?」

と考えることがあります。

もちろん、それも一つの要素です。

しかし、実際のお子さまのお口は、もう少し複雑です。

歯が生えてくる場所には、顎の成長が関係しています。

そして上顎と下顎は、同じスピードで、同じ方向に成長するわけではありません。

だからこそ、小児の咬合発育を考えるときには、

「この歯が今どこにあるか」だけではなく、
「その歯を支える顎が、これからどう成長していくのか」

を見ることが大切になります。

1.子どもの顎は「ずっと同じ」ではありません

当たり前のようですが、とても大切なことです。

お子さまのお口は、成長とともに変化します。

乳歯が生える。

顎が成長する。

乳歯が抜ける。

永久歯が生えてくる。

さらに顎が成長する。

こうした変化を繰り返しながら、少しずつ大人の噛み合わせへ近づいていきます。

つまり、5歳のお口と10歳のお口では、同じ「歯並び」でも意味が違います。

子どもの歯並びは、完成した形ではなく「成長の途中」なのです。

ここを理解しておくことが、小児の歯並びを考えるうえで非常に重要です。

2.上顎と下顎は、同じようには成長しません

「顎が大きくなる」と一言で言っても、上顎と下顎では成長の仕方が違います。

上顎と下顎では、成長する時期や方向、成長の量にも違いがあります。

特に成長期のお子さまでは、

上顎と下顎の成長バランス

を見ることが重要になります。

例えば、

上顎の成長と下顎の成長のバランス。

前後方向のバランス。

左右のバランス。

歯が並ぶスペースとのバランス。

こうしたさまざまな要素が組み合わさって、最終的な噛み合わせにつながっていきます。

そのため、

「下の歯が前に出ている」

という現象だけを見て、

「下の歯が悪い」

と判断することはできません。

上顎と下顎、そして歯の位置を一緒に見る必要があります。

3.「顎が小さい」とは、どういうことでしょう?

歯並びの相談で、

「うちの子は顎が小さいんでしょうか?」

という質問をいただくことがあります。

実は、ここも少し注意が必要です。

「顎が小さい」という言葉には、

  • 顎の骨そのものの大きさ
  • 歯列の幅
  • 歯が並ぶスペース
  • 歯の大きさとのバランス
  • 上顎と下顎の位置関係

など、いくつかの意味が含まれることがあります。

例えば、顎の大きさがそれほど小さくなくても、歯の大きさとのバランスによって歯が並びにくいことがあります。

反対に、歯並びが一時的にガタガタしていても、成長や生え変わりによって状況が変化することもあります。

だから、

「歯がガタガタしている=顎が小さい」

と簡単に決めつけることはできません。

4.「歯が並ぶスペース」はどこから生まれる?

永久歯は、乳歯より大きなものが多くあります。

それなのに、子どもの顎の中で永久歯がきれいに並んでいくためには、当然それに見合ったスペースが必要になります。

そこで重要になるのが、

「成長」と「生え変わり」

です。

乳歯から永久歯へ交換する過程では、歯の大きさや位置関係が変化し、歯列の幅や長さも変わっていきます。

また、乳歯の時期に見られる歯と歯の間の隙間が、永久歯への交換に関係することもあります。

ですから、

乳歯に隙間があるから「歯並びが悪い」

というわけではありません。

むしろ、成長途中だからこそ必要なスペースである場合もあります。

5.乳歯の「すきっ歯」は、必ずしも悪いことではありません

小さなお子さまの前歯を見て、

「歯と歯の間が空いているけど大丈夫?」

と心配される方もいらっしゃいます。

乳歯の時期には、歯と歯の間に隙間が見られることがあります。

これは、後から生えてくる永久歯のためのスペースとして重要な意味を持つ場合があります。

永久歯は乳歯より大きいため、

乳歯の段階である程度のスペースが確保されていることが、永久歯の交換を考えるうえで重要になることがあります。

したがって、

「隙間がある=悪い」

「隙間がない=良い」

という単純な話ではありません。

ここでも大切なのは、成長の流れを見ることです。

6.「今の歯並び」だけで将来を決めつけない

これは小児の咬合発育で、私が特に大切にしている考え方です。

例えば、永久歯が生え始めたばかりのお子さま。

前歯が少し重なっている。

歯の向きが少し斜めになっている。

そんなとき、

「このまま全部ガタガタになるのでは?」

と心配になるかもしれません。

しかし、成長や永久歯への交換によって、歯並びが変化する可能性があります。

一方で、明らかにスペースが不足している場合や、噛み合わせに問題がある場合には、成長をただ待っているだけではなく、適切な時期に対応を考えた方がよいケースもあります。

だからこそ、

「待つ」のか、
「今から何かする」のか。

その判断が重要になります。

7.では、顎の成長をどうやって見るのでしょう?

歯並びだけを見て、

「顎がこれからどのくらい成長するのか」

を正確に判断することはできません。

年齢。

現在の歯の生え変わり。

上下の顎の関係。

歯列の状態。

噛み合わせ。

顔貌。

必要に応じた画像検査。

そして、これまでの成長の経過。

こうした情報を総合して、お子さまのお口を見ていきます。

つまり、

咬合発育は「一枚の写真を見ること」ではなく、「成長の物語を見ること」

だと私は考えています。

8.「成長を利用する」という考え方

小児矯正でよく聞く言葉に、

「成長を利用する」

というものがあります。

これは、

「成長すれば自然に歯並びが全部きれいになる」

という意味ではありません。

そうではなく、

お子さま自身が持っている成長の力を考慮しながら、必要な時期に必要な治療を検討する

という考え方です。

成長には個人差があります。

同じ年齢でも、歯の生え変わりや顎の成長の状態は違います。

だからこそ、

「6歳だからこう」

「8歳だからこう」

と年齢だけで判断するのではなく、

「この子は今、どの成長段階にいるのか」

を見ることが大切になります。

9.成長を考えるからこそ「早期相談」に意味があります

ここで一つ誤解していただきたくないことがあります。

早く相談するということは、

早く矯正装置をつけるという意味ではありません。

むしろ、

「今は何もしなくていい」

と分かることも、大切な診断の一つです。

例えば、

「今は永久歯の生え変わりを見ていきましょう」

「この状態なら、もう少し成長を待ちましょう」

「ここは今の段階で確認しておいた方がいいですね」

という判断ができます。

つまり早期相談には、

「治療を急ぐため」ではなく、「適切なタイミングを逃さないため」

という意味があります。

10.石﨑歯科医院が大切にしていること

私が子どもの歯並びを診るときに大切にしているのは、

「現在の歯並びを採点すること」ではありません。

もちろん、現在の状態を正確に把握することは必要です。

しかし、それと同時に、

「この子は今どの段階なのか?」

「これからどのように成長していく可能性があるのか?」

「歯が並ぶためのスペースはどうなのか?」

「上下の顎のバランスはどうなのか?」

「お口の機能に気になるところはないか?」

という視点を持つことを大切にしています。

お子さまのお口は「今」だけを見るものではありません

子どもの歯並びは、毎日のように少しずつ変化しています。

だからこそ、

「今、きれいに並んでいるか」

だけではなく、

「これから、どのように育っていくのか」

を見る。

それが小児の咬合発育を考えるうえで、とても大切な視点です。

歯並びが気になったとき、

「もう少し様子を見ようかな」

と思うこともあるでしょう。

それも一つの選択肢です。

ただし、その「様子を見る」が、

何となく待つ

のではなく、

「現在の状態を知ったうえで、成長を見守る」

であれば、より安心です。

第2章のまとめ

子どもの顎の成長を考えるとき、大切なのは……

① 上顎と下顎は同じようには成長しない

② 歯並びは「歯の大きさ」と「顎・歯列のスペース」のバランスで考える

③ 乳歯の時期の歯並びだけで将来を決めつけない

④ 成長には個人差がある

⑤ 「早く治療」ではなく「適切な時期を見逃さない」

そして何より、

「今のお口」だけではなく、

「これからのお口」を考える。

これが、石﨑歯科医院が大切にしている咬合発育という考え方です。

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